トワ電機の経理課長は、保証引当金の見積りを決算からの逆算で決めていた。不具合率も修理費用もリコール範囲も、 赤字を避けられる数字に合わせて選ばれていた。
舞台となった企業
トワ電機は住宅用給湯機器を製造する年商270億円のメーカーである。製品の保証には毎期、不具合率や修理費用の 見積りに基づく保証引当金が計上されていた。
引当金を小さく見せる手口
経理課長は複数の方法で引当金を小さく見せていた。過去の不具合発生率が上昇していたにもかかわらず、 数年前の低い率を見積りに使い続けた。修理費用は部品代のみを計上し、出張費や人件費を織り込まなかった。 ある欠陥ロットについては、実際より狭い対象範囲を設定して引当額を最小化した。ある会議で 「全数交換の前提で引き当てたら、今期は赤字になります」と発言していたことが、後に決算からの逆算で 数字が決められていたことを示す材料となった。
綻びの発覚
欠陥のある製品で重大な不具合が発生し、当局への報告と大規模なリコールが避けられなくなった。実際のリコール 対象範囲は社内の想定をはるかに超え、それまでの引当額では到底足りず、不足分が一気に損失として計上された。
経営者・管理部門への3つの視点
- 保証引当金の計算に使う不具合率と単価は、直近の実績に基づいて毎期見直す。古い前提を使い続けない。
- 品質部門が持つ不具合情報を、経理部門へ定期的に共有する仕組みを作る。部門間の断絶を放置しない。
- リコールの対象範囲は、都合のよさではなく技術的な根拠に基づいて決める。範囲の恣意的な限定を防ぐ。
おわりに
「まだ確定していない」という言葉は、見積りを甘くする理由にはならない。むしろ確定していない部分をどう 見積もるかにこそ、経理の役割がある。不具合率の前提が何年前のものかを確認することが、最初の一歩になる。
初出: note「不正会計ケース48 「不具合率は、まだ確定していませんから」」(2026.08.27)