Case Study

不正会計ケース41 「自社の株で儲けたなら、利益でしょう」

本業はほぼゼロなのに、決算はいつも過去最高だった。

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決算説明会で経理部長は淡々と「現金が入ってきたので収益に計上しました」と述べた。 だが、その現金の出どころをたどると、すべて株主との取引に行き着いた。

舞台となった企業

ハクヨウ産業は包装資材を手がける年商210億円のメーカーである。主力事業の営業利益はほぼゼロという厳しい状況が続いていたが、 決算書に載る最終利益は毎期黒字で、しかも過去最高を更新し続けていた。

資本取引を利益に変える手口

経理部長がとった方法は3つあった。自己株式を買い戻した後、高い価格で第三者に処分し、その差額を「有価証券売却益」として 営業外収益に計上する。新株予約権を割り当てて得た払込金の一部を雑収入として計上する。そして子会社増資に絡めて、 実態のない受入益を作り出す。

いずれも株主との取引によって生じた資金の動きであり、会社が外部から稼いだ利益ではない。しかし経理部長は 「現金が入ってきたのだから収益だ」という素朴な理解のもとで処理を続けていた。

綻びの発覚

監査で、営業損益と最終損益の間に大きな乖離があることが問題視された。差を埋めていた「特別な収益」の内訳を ひとつずつ辿っていくと、そのすべてが株主との取引に行き着いた。資本取引と損益取引の区別が社内で共有されておらず、 これを検証する立場の人間もいなかった。

経営者・管理部門への3つの視点

  • 自己株式の処分差額は利益ではなく、純資産の増減として処理する。株主との取引を損益に混ぜない。
  • 営業損益と最終損益が大きく乖離している場合、その理由を必ず確認する。差を埋めている収益の中身を辿る。
  • 株主との取引と、外部との商売を社内ルールとして明確に区分する。資本取引と損益取引の区別を全社で共有する。

おわりに

自己株式や新株予約権にまつわる資金の動きは、現金として手元に入ってくるがゆえに「収益」と誤認されやすい。 最終利益だけを見て安心せず、その中身がどの取引から生まれたのかを確認することが、最初の一歩になる。

初出: note「不正会計ケース41 「自社の株で儲けたなら、利益でしょう」」(2026.08.20)

本業と資本取引の利益、きちんと区別できていますか。