Case Study

不正会計ケース6 決算書に載らない小さな会社

長期貸付金24億円について、経理部長は言葉に詰まった。

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メインバンクの融資担当者が貸借対照表の長期貸付金24億円について質問したとき、 経理部長はすぐには答えられなかった。この長期貸付金の正体が、後の調査で明らかになる。

舞台となった企業

舞台は、産業用ポンプ製造の中堅上場メーカー(社員約400名、年商130億円)。海外販売網の拡大戦略が失敗し、 約12億円の含み損を抱えていた。この含み損を決算に出さないために社長が実行したのが「損失飛ばし」だった。

損失飛ばしの仕組み

損失飛ばしとは、含み損を抱えた資産を、連結決算に含まれないグループ会社へ帳簿価額のまま売却する手口である。 出資比率15%の受け皿会社に、滞留在庫と回収不能債権を15億円で売却したが、この会社に支払い能力はなかった。 そこで本体が「長期貸付金15億円」を実行し、その資金で代金を支払わせた。

翌期以降も同じ構図が繰り返され、新たな在庫が追加で飛ばされ、利息は元本に上乗せされていった。 長期貸付金は15億円から24億円まで膨らんでいた。

綻びの発覚

綻びは、三つの方向から同時にやってきた。

  • 銀行:融資審査で、本業と無関係な貸付金の増加を指摘した。
  • 監査法人:新任会計士が受け皿会社の決算書を精査し、債務超過であることを発見した。
  • 現場:倉庫の在庫確認で、所有権が移ったはずの在庫が一歩も動いていないことが判明した。

調査の結果、受け皿会社は実質的に支配された連結対象と判定され、飛ばしていた損失は本体に引き戻された。 特別損失24億円の一括計上により、純資産28億円はほとんど消滅した。

経営者・管理部門への3つの視点

  • 連結の範囲は出資比率という形式ではなく、実質で判断する。役員を送り込み、資金を貸し付け、取引の大半を本体に依存する会社は、比率にかかわらずグループの一部である。
  • グループ会社への資産売却は、価格の妥当性と買い手の支払原資をセットで確認する。売却代金の原資が自社からの貸付金であれば、それは損失の引っ越しにすぎない。
  • 本業と関係のない貸付金・未収入金の残高推移を毎期確認する。営業外債権が説明なく増え続ける会社には、必ず理由がある。

おわりに

損失飛ばしは先送りしている間に傷を深くする。受け皿会社の支払不能で利息が積み重なり、追加の飛ばしで問題はさらに拡大する。 グループ内で本業と無関係に膨らむ貸付金がないか、確認することが最初の一歩になる。

初出: note「不正会計ケース6 決算書に載らない小さな会社」(2026.07.16)

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