セイリュウ・テクノでは、月末の締め作業のたびに案件コードが書き換えられていた。「その工数、隣の案件に付けておいて。 あっちはまだ余裕がある」という指示が、赤字案件の実態を見えなくしていた。
舞台となった企業
セイリュウ・テクノはシステム開発を受託する年商130億円の企業である。案件ごとの採算はプロジェクトマネージャーの 裁量に委ねられ、工数の入力も現場任せになっていた。
工数を付け替える手口
あるプロジェクトマネージャーは、原価が膨らんでいた案件(A)の工数を、採算に余裕のある案件や期をまたぐ長期案件(B)に 付け替えるよう若手に指示していた。月末の締め日直前に案件コードを書き換えることで、Aの原価はBへ流れ、 双方の案件がともに薄い黒字を保っているように見えた。
綻びの発覚
最後まで原価を押し付けられていた大型の長期案件が完了した際、積み上げられていた原価が一気に表面化し、 巨額の損失が計上された。監査法人が工数の入力履歴を遡って調べると、締め日の直前に案件コードが書き換えられた 記録が大量に見つかった。
経営者・管理部門への3つの視点
- 工数や原価を案件間で振り替える操作について、履歴管理と承認プロセスを整備する。現場任せにしない。
- 案件別の採算が不自然にそろって薄い黒字になっていないかを確認する。均一さは健全さの証ではない。
- 原価が予算を超えた案件については、速やかに損失を計上するルールを機能させる。先送りの余地を残さない。
おわりに
案件別の採算がどれも同じように薄い黒字であることは、健全さの証ではなく、原価が動かされているかもしれないという 兆候である。締め日直前の案件コードの書き換えがどれだけあるかを確認することが、最初の一歩になる。
初出: note「不正会計ケース46 「その工数、隣の案件に付けておいて」」(2026.08.25)