あるホームセンターチェーンは、売上不振のなか粗利率改善という目標を掲げていた。その改善の裏にあったのは、 書面のないリベート(仕入割戻)だった。
不正の手口
メーカーからのリベートは通常、契約書に基づいて計上される。この会社では、書面契約のないリベートをバイヤーが口頭合意のみで計上し、 粗利率を押し上げていた。計上した未収リベートは年々積み上がっていったが、実際には回収されなかった。
メーカー側から支払いについて照会が来ても、担当バイヤーがその連絡を握りつぶし、買掛金との相殺によって 「回収済み」であるかのように帳簿上を処理していた。
綻びの発覚
監査法人が実施した残高確認状で、メーカー側から「割戻の未払いはない」という回答が返ってきたことが決定的な綻びとなった。 同時期に、経理が実施した未収リベートの年齢調べで、9億円以上が1年を超えて滞留していることも判明した。
経営者・管理部門への3つの視点
- 書面契約のないリベートの計上を禁止する。口頭合意のみで利益に影響する項目を計上できる状態を残さない。
- 毎期、未収リベートの年齢調べを実施する。回収されずに積み上がる未収金は、実在しないリベートである可能性がある。
- 粗利率改善の要因を分解し、キャッシュフローと合わせて確認する。帳簿上の改善が現金の増加を伴っているかを見る。
おわりに
粗利率という指標は、リベートの計上一つで簡単に動かせてしまう。改善の根拠が書面と現金の両方に裏付けられているかを、 定期的に確認することが最初の一歩になる。
初出: note「不正会計ケース9 帳簿の中にしかない値引き」(2026.07.19)